弐・『忘れ物』編

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「珍しいな。チッ、仕方ねぇ。お前、余計なことは考えるなよ?」  舌打ちされてしまったが、平人自身もどうにもできないので、目だけで同意した。  千穂はそれを見て、平人と共に大通りを抜け、路地裏へと入った。 「お前、何しにきた?」  壁に平人を打ち付け、肩を押さえつけながら、威圧的に聞いた。  それから耳もとで囁く。 「嫌だろうが、体の力を抜け。後始末はしてやる」  聞いているのか、いないのか、ぼーっとした目つきの平人が何かを言いたそうに見ていた。 「何も言うな。わかってるから、落ち着いて任せてくれ」  少し焦ったような笑みを浮かべ、千穂は頷いた。 「何者だ? 目的は?」  うつろな目をした平人が、千穂を睨み付ける。 「面倒だな。ってか、ついてきたのはいつだ? トンネル行ったこの前は、俺より楽しそう…ってその時か」  一人納得した千穂が、平人の肩に指をめり込ませつつ、笑顔で聞く。 「おい、主を代えないか? 俺についてくれば、早く楽にしてやれるが」  平人は胡乱(うろん)な目つきで、ふるふると首を振った。 「そうか、なら主導権を返してやれ。どうするかは、そいつと考えてやる」
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