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「珍しいな。チッ、仕方ねぇ。お前、余計なことは考えるなよ?」
舌打ちされてしまったが、平人自身もどうにもできないので、目だけで同意した。
千穂はそれを見て、平人と共に大通りを抜け、路地裏へと入った。
「お前、何しにきた?」
壁に平人を打ち付け、肩を押さえつけながら、威圧的に聞いた。
それから耳もとで囁く。
「嫌だろうが、体の力を抜け。後始末はしてやる」
聞いているのか、いないのか、ぼーっとした目つきの平人が何かを言いたそうに見ていた。
「何も言うな。わかってるから、落ち着いて任せてくれ」
少し焦ったような笑みを浮かべ、千穂は頷いた。
「何者だ? 目的は?」
うつろな目をした平人が、千穂を睨み付ける。
「面倒だな。ってか、ついてきたのはいつだ? トンネル行ったこの前は、俺より楽しそう…ってその時か」
一人納得した千穂が、平人の肩に指をめり込ませつつ、笑顔で聞く。
「おい、主を代えないか? 俺についてくれば、早く楽にしてやれるが」
平人は胡乱(うろん)な目つきで、ふるふると首を振った。
「そうか、なら主導権を返してやれ。どうするかは、そいつと考えてやる」
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