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「……だからね、千穂兄…、あたしは…」
昼休みも終盤になる頃、大学の敷地内にあるカフェテリアへ食事をしに来ていた千穂達の前に、腕を組んだ一人の少女が立ち塞がって道をふさいでいた。
目が大きいのが印象的で明るそうだが、強気にも見える。肩より少し長く伸びた栗色の髪の毛は低めのポニーテールにして首の後ろで揺れていた。
そんな彼女、土浦のえる<つちうらのえる>は体勢もそのままに捲し立てる。
「聞いて欲しい話があるんだけど…」
彼らがいる場所が大勢の邪魔になる所だったので、千穂は面倒臭そうに移動しながら口を開き、平人も賛同するように言った。
「何? もったいぶらなくていいから言えば?」
「そうだよ、のえるちゃん!」
彼らの言葉に、いや、むしろ平人の言葉に嫌そうに目を細めてのえるは続けた。
「ここ最近、この大学内で物がなくなる事件…ってほどじゃないけど、まあそんなことが起こっているのは知ってる?」
「…なんだそれ」
「あ、その話? 最近俺の知り合いも、落としたものが返ってこないって嘆いてたよ」
「いえ、千穂兄に聞いたので、かがっち先輩には言ってません」
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