さようでございますか 佐也加の恋6

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フラワーショップをでると、目の前に普段通りの居酒屋があった。 相も変わらず店先はタバコの吸い殻が落ちてる。 たいして流行ってないのに吸い殻だけは一人前。 この店に来る客層が一目でわかる状態だ。 佐也加が居酒屋の引き戸を開け店内に入ると、二階への上がり口に革靴が脱いである。 黒田の靴だ。 あのババア。 私が居ないからって早速、男を引き込んでやがる。 佐也加は二階の自分の部屋に行かずカウンターに散らかったグラスと皿をガチャガチャと音を立て隅に追いやって冷蔵庫から出したウーロン茶を置くと、有線放送のスイッチを入れた。 店の小汚いスピーカーから演歌が流れ出した。 チャンネルをポップスに変えボリュームを上げると、音楽の合間に頭の上の天井で足音がした。 あのババアと黒田、私が帰ってきたことに気づいたようだ。 佐也加はウーロン茶を飲みながら天井を見上げ言った。 「なにを焦っているんだバカ」
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