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カップはこっちで、グラスはこっち……と。
コーヒーのいい香りがしてきたな。
たぶんマスターがコーヒーを入れているんだろう。
ウチのマスターには拘りがあって、お客様にコーヒーを提供する前に必ず、コーヒーを一杯入れる。
なんでも、お客様に不味いコーヒーを出す訳にはいかないという理由らしいが、味なんて同じコーヒー豆なんだから変わる訳無いじゃんって思うんだが……。
でもマスター曰く、｢コーヒー豆は生きてる｣らしい。
正直、俺には分からない話しだ。
だけど、そんな理由でコーヒーを開店前に入れ続けているマスターを俺は尊敬している。
ある日、コーヒーが不味いと言ってコーヒー豆を全部捨て、店を休業にしたこともある。
本当にザ・職人なマスターだ。
俺は夢の為にこの店でバイトを続けているけど、この店を、引いてはマスターを選んで良かったと思う出来事だった。
マスターは良くも悪くも美味しいコーヒーをお客様に、っていう人だからね。
俺も見習わないと！
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