脱力と刻限

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 俺は魁の事をジスティーに任せて街に出た。あの様子なら目を覚ました時、俺がいなくても大丈夫だろうと安心したからだ。これで思い残す事なくラグナを後に出来る。魁を迎えに来る時にもう一度は来る事になるだろうが、それも僅かな時間。俺が自由にこの世界を巡る時間はもうないだろう。  すっかり日は落ち、家の明かりも消えている。辺りを照らすのは月と星の光だけだ。それでも空気が濁っていないからか、比較的明るい。俺は人通りのないメインストリートを歩きそのまま街の外に出た。  街の外に出ると足を速める。見舞客の対応で疲れたと思っていたのに身体は心底元気だ。憂いがないという清々しさのような物が俺の足取りを軽くしていた。夜を通して時々風を使いながら走り、チスイ達の待つアジトに戻って来た時には朝型になっていたが、あまり疲れを感じていなかった。 「おかえりー」  アジトに戻ると、チスイが椅子に座ってお茶を飲んでいた。すっかり寝ていると思って戸をゆっくり開けて入ったにも関わらずチスイは俺が帰って来た事に気が付いてまるで昼間であるかのように呑気に迎えてくれた。 「夜通し待ってたのか?」 「ううん。さっき起きたとこ」  俺に気を使ってなのか或いは本当なのか分からないが、チスイはそう答えてお茶を啜る。 「仁、何か良い事あった?」 「まぁな。少し寝るよ」 「うん。おやすみ」 「ああ。おやすみ」  チスイは深くは聞いてこなかった。ただ俺の表情から読み取ったのだろうどこか嬉しそうにお茶を飲み続けていた。
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