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俺はチスイ達と共に暗黒界に入った。俺が寝ている間に結局来る事になったらしいザンジバルも一緒だ。ザンジバルとチスイの間でどういうやりとりがあったのかは分からないが、チスイはザンジバルの同行を許した。俺にはそれで十分だ。
「まだ歩くの?」
ザンジバルが、背に乗るチスイに問い掛ける。既に暗黒界に入ってしばらく歩いている。どこか目的地はあるようだが、そこがどこだかは聞いていない。聞いてもこの世界の事を殆ど知らない俺には分からないからだ。
「もう少し。少し遠回りしてるから時間かかってるけど」
どういう原理なのかは分からないが、俺達はラグナで滞在したアジトから前の時と同じように南下してからチスイが扉を開き、前と同じ三方を岩壁に囲まれた場所に出た。前回はそこから壁を越えて黒炎龍の元を目指したが、今回は唯一伸びる道を進んだ。その分進むのは楽で、整備こそされていないが、誰かが意図して作った道だとは分かるような道を歩いている。途中何度かの分かれ道をチスイは迷う事なくザンジバルに指示をだして進ませた。
「それにしてもこっちはいつ来ても暗いな」
この世界に入ってから太陽を見ていない。月や星は明るく、歩くのには困らないがなんとなく気が滅入る。ラグナも夜だったし、当然といえば当然のような気もするが暗黒界に入ってしばらく経っても日が昇るような様子はない。
「ここじゃこれが普通よ。あたしもレーラもラグナに行くまで太陽なんて見た事なかったし」
世界が変わればその気候も変わるって事か。ラグナがガイアと似たような感じだったからあまり感じなかったな。
「見えたよ」
チスイの視線の先を見ると、進路の先に街の明かりのような纏まった灯りが見えた。
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