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信じること
他人を信じることができない。
それは随分前から気づいていた。
原因はこれまでの人生全て。
両親の離婚
父方の祖母との不仲
自分の勇気のなさ
友達だと思っていた人の何気ない一言
挙げたらキリがないほどたくさんある。
そのなかでも一番大きいのは、
両親の離婚だろう。
恋愛がわからない。
どうせ別れるのだから、付き合う意味などない。
それ以前に、他人に対する恋愛感情での『好き』が理解できない。
両親が離婚したとき、まだ子供だった。
どちらかを選べと言われ、困った。選べる訳などない。
どちらも親に変わりはなく、優劣などないのだから。
家族は二つに別れ、滅多に会えることなどなくなった。
悲しい。
泣いた。
どうして自分がこんな目に遭うのか、と全てを恨んだ。
当時飼っていたペットはもう居ない。
最期を見届けることが出来なかった。
あんなに可愛かったのに、最後は何もできなかった。
大切なものはいつの間にか指の間からすり抜けて、気づいた時にはもう遅くて、
手のなかには何一つ残っていない。
足元に転がっているのは、後悔。
心に芽生えたのは人に対する不信感。
頭の中を埋め尽くすのは現実世界からの逃避。
いっそのこと死んだらどんなに楽だろうと何度も思った。
しかしそんな勇気すら失ってしまった。
中身もなく人の形をした何か。
もう何年もさまよっている。
流されるままに、生きた。
まだ形は保っている。
中にはあの後増えた、傷跡がたくさんついた。
少し塩っぱいような液体も溜まった。
時々、傷跡にその液体がしみることもあった。
しかしまだ中は満たされていなかった。
中が満たされたとき外も崩壊するのだろう。
待っていたくない。
これ以上傷を増やすのは苦しい。
それでも自ら壊すこともできないから。
だから、壊れてしまうのを待つしか手はない。
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