さよならを越えて

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 将志は、都会より田舎屋敷にいる私が、魅力的だと言ったことがある。  私は信心深くはないし、家の宗派もよく知らないけれど。  自然から連なる家系なのだろうな、と思う。 「ごあいさつが遅くなりました。村橋武と、あれが浦上将志です。数々の恩恵を、ありがとうございます」  なにかを願うのではなく、私は、そうしている。  人とのつながりや、縁みたいなものは目には見えないけれど確かにあるから。  時々、こういう確認作業をする。  私は将志と、生きていきます。 「武さん、将志いないよー」  ナギが戻ってきた。 「……ったく。なに迷子になってるんだよ、世話のやける」  携帯を鳴らす。 『武さん、めっ……ちゃくちゃいっぱいある、栗の木!!』 「……はいはい、よかったね」 『ここのお母さんがもう食べ飽きてるから、実が落ちたら好きなだけ持ってっていいって!!』  イエー! とか叫びながら知らないお母さんを連れてきた。 「しかも地元の料理教えてくれるって!!」  ……申し訳ございません、うちの将志がわがままで。  聞けば、不便な立地なのであまり寄りつく親戚もおらず、寂しいからと言ってくれた。  帰りはナギと、知らないお母さんも車に乗せた。  ……男三人の車に知らない女性を乗せるとか。  下手すりゃ誘拐だ。
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