126人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
将志は、都会より田舎屋敷にいる私が、魅力的だと言ったことがある。
私は信心深くはないし、家の宗派もよく知らないけれど。
自然から連なる家系なのだろうな、と思う。
「ごあいさつが遅くなりました。村橋武と、あれが浦上将志です。数々の恩恵を、ありがとうございます」
なにかを願うのではなく、私は、そうしている。
人とのつながりや、縁みたいなものは目には見えないけれど確かにあるから。
時々、こういう確認作業をする。
私は将志と、生きていきます。
「武さん、将志いないよー」
ナギが戻ってきた。
「……ったく。なに迷子になってるんだよ、世話のやける」
携帯を鳴らす。
『武さん、めっ……ちゃくちゃいっぱいある、栗の木!!』
「……はいはい、よかったね」
『ここのお母さんがもう食べ飽きてるから、実が落ちたら好きなだけ持ってっていいって!!』
イエー! とか叫びながら知らないお母さんを連れてきた。
「しかも地元の料理教えてくれるって!!」
……申し訳ございません、うちの将志がわがままで。
聞けば、不便な立地なのであまり寄りつく親戚もおらず、寂しいからと言ってくれた。
帰りはナギと、知らないお母さんも車に乗せた。
……男三人の車に知らない女性を乗せるとか。
下手すりゃ誘拐だ。
最初のコメントを投稿しよう!