さよならを越えて

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「君の夢は走り出したのに、私は立ち止まってるのか……って」 「はは……、気づけば校長やってんじゃね?」  ザワザワと、巨木が葉を鳴らす。  どんな老木でも、伸ばす枝葉は若々しくあるように。 「ナギ、クスノキは私が学年主任に向いてるって言ってる?」 「ナギ、俺の店は繁盛する!?」  うぅ……、と困った顔をして。  そりゃそうだ、と二人して笑ってしまう。  将志は信心深いのか、パンパンとクスノキに手を合わせている。  私も、なんとなく頭を垂れた。  先住者への敬意のように。 「栗の木、こっちー」  もう車は入れない道を、ナギが示す。 「なんか立ち入り禁止の国有林とかじゃねえよな!?」 「歩ける道があるから……誰かは通ってると思うけど……調べてからのほうがいいかな」 「あ、武さん、奥に民家見えた!! すいませーん、誰かいますかー!?」 「将志、頼もしいね」  見えなくなってから、そっとナギに言った。 「ナギ、仲良しになったの」 「そうだね、最初はちょっとこわがってたもんね」 「森から水、わけてもらうの」  ……うん、よくわからない。 「よかったね」  わあい、と将志を追いかけていった。
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