さよならを越えて

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 大学への入学を控えた春休み。その日も、将志はだらだらと私のアパートにいた。  特に何をするでもなく、こたつに足を突っ込んでテレビを見ている。 「あ、武さん。ちょっとお願いがある」 「うん」  最後のみかんに伸ばそうとした手をとめた。 「俺を武さんの両親に会わせて?」  思考が、真っ白になる。 「な、に……?」 「俺、武さんの両親ってどんな人か興味あるし、ごあいさつしておきたい」 「私の両親に何の挨拶をする気だ」 「武さんを俺にくださ……」 「息子を嫁にやる親がいるか!!」 「俺のこと……まだ言ってない……とかですか」 「言う必要がない」 「俺……とのことは……何も?」 「結婚するわけでなし、私が誰といようが親には関係ないだろ」 「会わせてください」 「断る」  プツン、とテレビが消された。 「じゃあ実家の住所教えてください。一人で行きます」 「……わかった、私も行く」 「へ?」
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