126人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
大学への入学を控えた春休み。その日も、将志はだらだらと私のアパートにいた。
特に何をするでもなく、こたつに足を突っ込んでテレビを見ている。
「あ、武さん。ちょっとお願いがある」
「うん」
最後のみかんに伸ばそうとした手をとめた。
「俺を武さんの両親に会わせて?」
思考が、真っ白になる。
「な、に……?」
「俺、武さんの両親ってどんな人か興味あるし、ごあいさつしておきたい」
「私の両親に何の挨拶をする気だ」
「武さんを俺にくださ……」
「息子を嫁にやる親がいるか!!」
「俺のこと……まだ言ってない……とかですか」
「言う必要がない」
「俺……とのことは……何も?」
「結婚するわけでなし、私が誰といようが親には関係ないだろ」
「会わせてください」
「断る」
プツン、とテレビが消された。
「じゃあ実家の住所教えてください。一人で行きます」
「……わかった、私も行く」
「へ?」
最初のコメントを投稿しよう!