プロローグ

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 ここで、定期も財布の中だと肩を落とす。しかもバイトの往復で乗るからと、先週、三か月分を買ったばかりだと呟いた。 「とりあえず、どこかで朝食を食べない? 奢るから」 「でも……」 「私が食べたいの。飲食店に一人で入ってご飯食べるの苦手なのよ」  派出所を出て、近くの喫茶店に入る。青年は下を向き、メニューも見ずに躊躇していたので、私は二人分のモーニングを注文した。 「お飲み物は何になさいますか?」 「私はコーヒーで。東塚君は?」 「お……俺もコーヒーで」  それまで自己紹介もきちんとしていなかった私たちの間には、硬い空気が流れている。彼の名前は派出所で書類を書いている時に覚えた。 「あの、俺の名前……」 「ふふ。勝手に覚えちゃった。東塚菜緒樹君でしょう?」 「は、はい。あの俺も名前、聞いていいですか?」 「……ヒトミ。三倉日登美(みくら ひとみ)よ」
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