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仕事に集中できない。 気を抜けば溜め息ばかりで、頭の中では冴子の言葉がずっとぐるぐる回り続けていた。 「―――……あっ!!」 仕事に支障を来してはいけないとわかっていても、集中力が散漫しているせいで凡ミスを繰り返す。 鋭い工具はプラチナのエッジを掠め、環を描く手の中のものに小さな傷を付けてしまった。 ―――やり直し……だな。 傷が付いても、彫金作業中であれば修正が利く。 だけど、人の心に付いた傷は、そう簡単に修復する事ができない。
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