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深夜、僕はマンション横の、ゴミ置き場の前に立っている。
冬の風が、近くの公園の木々を揺らして、人の叫び声のような気味の悪い音を立てた。
僕は手に持っている、白いビニール製のゴミ袋を、無造作に投げ捨てた。
中に入っている西瓜ほどの大きさの、丸くて黒い塊が、鈍い音をたててビニールごと転がった。
「これで、やっと終わった」
疲れた声でそう呟いたとき、僕の横を冷たい風が通りすぎた。
その風が、投げ捨てた袋の中身に、ビニールを纏わりつかせた。
白いビニールの奥に、乱れた黒い髪の毛と、見開いたふたつの目が見える。
恐ろしい形相をした女の顔が、纏わりつくビニールに浮かびあがっていた。
僕は冷めた目で、しばらくそれを眺めていたが、やがてマンションの入口へと歩きはじめた。
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