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僕は彼女の隣に横になって、顔を近づけた。
そして、チョコレートの髪の毛を優しくなでながら、静かな声で彼女に話しかけた。
「やっと、僕の願いが叶ったよ」
僕は上半身だけを起こして、彼女の顔を愛おしい気持ちで眺めたあと、その鈍く光る唇に、僕の唇を近づけた。
チョコレートでできた彼女の唇は、とても冷たかったけれど、それが間違いなく彼女の唇をかたどったものだと思うと、僕はとても興奮した。
口づけのあと舌で舐めると、僕の唇も甘い味がして、まるで彼女の一部が僕に残ったような気がした。
「僕は毎朝、キミを見ていたんだよ。電車の中で、キミのうしろに立って」
チョコレートが溶けないように、冷たい空気を満たした寝室の中で、僕は彼女に打ち明けた。
「キミはいつも、いい匂いがしていた。甘い香水の香りがね。まだ少し、残っているかな……」
そう言って僕は、チョコレートの体に着せた彼女の制服に鼻をつけて、息を吸い込んだ。
「ああ……まだキミの香りが残っているよ。僕は、この香りを嗅ぐたびに、可愛いキミを食べてしまいたいと思っていたんだ」
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