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カーテンの向こうから声が聞こえてきて、ぺたぺたと、スリッパの足音が遠ざかっていく。
あたしは寝返りを打つと、目をつむった。眠くは無いけど、寝よう、そう思った。
学校が終わり、僕たちは宮根村に帰っていた。
「5限まであると、疲れるな……」
「ええ」
夏だと言うのに、辺りは既に薄暗い。日中の暑さはその勢いを弱めていた。ふたり寄り添って歩いても、何とか暑くない。
「お腹空いたな……」
何気なく呟くと、澄子は嬉しそうにこちらに振り返った。
「なら、私が作るわ」
「何を?」
「聡人は何が食べたいの?」
「う~ん……」
取り立てて、食べたいものも無かった。
「別に……適当でいいよ。澄子の好きなもので……」
「え……」
途端に困惑の色が瞳に浮かんだ。
「私は……聡人の食べたいものを作りたいから……」
「…………」
僕は心中でため息をつくと、言った。
「じゃ、カレーだ。カレーを食べたい」
「ええ」
「……ああ、そうだ、美木に電話しないと」
澄子が夕飯を作ってくれるなら、美木に連絡をいれないといけない。
携帯を取り出すと、美木のそれに電話を掛けた。
「…………」
しばらく待つと、留守電に切り替わった。夕飯の用意をしなくていい旨を伝え、電話を切る。
「じゃ、買い物に行くか」
「ええ」
商店で買い物を済ませ、外に出ると、もう真っ暗になっていた。
「なあ、澄子……」
「何?」
「無理して、5限までつき合ってくれなくてもいいよ。疲れるんじゃないか?」
「あ……」
澄子は顔を伏せた。闇の中、白い横顔がぼんやりと浮かび上がる。
「別に、無理してなんか……」
「でも、授業は二限までで終わりだろう」
澄子と僕は、同じ学科で同じ学年なので、必修授業は重なる。月曜は、1、2限が必修だった。
「五限は、あれは、俺が特に、興味を持っているからで……澄子は別に、そんな事は無いんだろう?」
「そうだけど……でも……」
澄子はこちらに顔を向けた。既に、悲壮とも言うべき表情が、そこには浮かんでいる。
「私は……なるべく一緒に居たいから……」
「……居るじゃないか。毎日一緒に」
「毎日一緒に居るのは、美木ちゃんだと思う……」
「…………」
「あ、ご、ごめんなさい、妙なこと言っちゃって……。兄妹なんだもの、当たり前よね」
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