第1章

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第1章

「今日で、春休みも終わりだな」 所属している、陸上部の部室の中でトレーニングウェアから制服に着替え、隣で同じように着替えている原田に話しかけた。 「そうだよなー。明日はもう、始業式だもな。本当に春休みは短いよな」 相づちを打ってくる。 「春休みの間も、ずっと部活だったしな。そういえば、明日の始業式の後に部活はあるんだっけ?」 原田に聞いた。 部室の中には、僕と原田の二人しか残っていなかった。 「明日は部活がお休みの日。体と頭を休ませる、大切な日だよーー。」 原田は、答えた。 「原田。お前の頭の中は、いつも休日だろ」 呆れた様に言うと、 「その通りでございますよ。浦河様のおっしゃるとおりでございます。私の頭の中は、休日だらけでございます」 制服に着替え終えた、原田が言った。 「明日の部活は休みね」 原田の返事を聞き流しながら、制服に着替え終えた。 「浦河ー、少しは構ってくれよ。寂しいじゃないかよ」 「また今度な。原田がギャグを言った時に暇だったら、相手してやるよ」 「冷たいなー。今度じゃなくて、今、構ってくれよ」 「今は忙しいの」 「制服に着替えているだけじゃん」 「だから、忙しいの」 そんな話をしながら、僕達は着替えを終えると、部室から外に出て歩き出した。 正門に向かって、中庭を二人並んで歩いている時、ふと原田が 「浦河。明日のクラス替えの事だけどさ、どうなるのかな?」 と、聞いて来た。 「1学年にクラスが2つしか無いから、一緒になる確率は50%だな」 僕は答える。 「俺達、また一緒のクラスになるのかな?」 「どうだろな。でも、今度また同じクラスになったら、中学の時から数えて、5年連続になるな。それに、うちの高校は3年になる時はクラス替えが無いから、今度一緒のクラスだったら、6年連続同じクラスが決定だよ」 右手の指を折りながら数えた。 僕の通っている学校は、2年から3年に進級する時にクラス替えは行わない事になっていた。「ここまで来ると、俺達って腐れ縁って奴だよな」 原田が言う。 「腐れ縁かどうかは、明日の朝になれば分かるさ」 僕は答えた。 「そうだな。明日になれば分かるしな。俺達がクラスを決めるわけじゃないから、ここで話をしても関係ないし」 原田はそう言うと、通学に使っているスポーツバックを肩に背負うと、腕時計を見て。 「浦河。バス停迄走れば、直ぐのバスに間に合いそうだけど、どうする?」 と聞いて来る。僕が 「一本後のバスにするよ」 と答えると 「俺、ちょっと用事があるから、先に帰る。また、明日な」 原田はそう言うと、駆け足で正門を走り抜け、バス停に向かって行った。 僕は、走って行く原田の背中を見ながら 「明日になれば分かる。か」 そう自分に言い聞かせながら、バス停向かって歩いた。 ここで、自己紹介をしようと思う。 僕の名前は、浦河隆二 この春から高校2年生。 成績については、中の上位。 陸上部に所属していて、自分で言うのも何だけど、中学時代には県大会等で納戸優勝したことがある位の実力があった。 中学3年の時、県内外の陸上の強い高校から推薦を受けたけど、自宅から通学出来て、昔からの友達も進学する、この学校に入学したのだった。 専門種目は短距離走だけど、高校に進学してからはリレーからマラソンにまでエントリーすることがあった。 何故、専門種目以外にもエントリーすることがあるのか、ちょっと説明すると、 僕の通っている高校は、全校生徒が約250名の小さな学校で、僕達陸上部もマネージャーを入れても13人しかいない。 だから、僕が短距離だけを専門的にやることは出来ず、走る競技なら何でもエントリーする。と、言う事になってしまうのだった。 『陸上の強い高校に進学して、短距離一本に絞れば、もっと良い記録が出せるんじゃないか』 『インターハイにだって出場して、優勝する事も出来るだろう』 と言う、中学の先生も居たけど、逆にそんな強い高校の選手に勝つこと、僕は目指していた。 僕の通っている学校について、もう少し詳しく話すと 学校の名前は ≪県立東高校≫ と言い、創立15年と言う、若い学校だった。学校の回りは、山や畑に囲まれていて、校舎はその山際に建っていた。 そして、校舎の屋上からは海が見える。 そんな、田舎にある小さな学校だった。 今、僕が話をしていた原田とは、名前を 原田達也 と言い、同じ陸上部で幅跳びの選手として活躍していて、実力は県下でもトップクラス。 成績は僕と同じ位で、中学の時からの同級生と言うか、腐れ縁の仲で、僕と同じ様に陸上の推薦を蹴って、この学校に進学していた。 原田曰く 『県外に行っても、行かなくても記録は同じ。高校生活は彼女を作って、青春を楽しまないと。陸上漬けの高校生活なんて、やりたくない』 そう言って、推薦を蹴っていた。 頼りになる奴と同時に、専門種目は違うけど、陸上以外でも勉強等、色々な事で競争している、僕の一番のライバルでもあった。
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