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第11章
訪問先の高校は、
≪高麗大學付属高校≫
と言う名前の学校で、全校生徒が約1000人と言う、マンモス校だった。
僕達が乗ったバスが、学校の敷地に入った時、バスの中で
「スゲー」
「でけー」
と言う声が、聞こえていた。
僕も
『大きな、学校だな』
と思った。
目の前には、僕達の学校とは、比べ物にならない位の、大きな校舎が建っていた。
バスが止まり、僕達は車を降りた。
相手の高校の生徒の代表と、先生が出迎えてくれた。
「アンニョンハセヨ」
出迎えてくれた生徒が、挨拶をしてきた。
「こんにちは」
僕は日本語で挨拶をした。
その後、僕達は、講堂みたいな部屋に案内された。
教壇に黒板、日本の教室と同じように、机が並んでいて、黒板の上には
【歓迎東高等學校本校訪問】
と書いてある、紙が貼ってあった。
通訳の人を間に挟み、両校の先生の挨拶があり、簡単な学校紹介があった。
そして、僕達はクラスごとに、校内を案内された。
僕達のクラスは、運動場で体育の授業を見学する事になった。
授業は、陸上の授業だった。
授業を見学していた時、久保先生が相手の高校の先生と、通訳の人と3人で何やら話をしていた。
そして、僕達の側に帰って来ると
「浦河、原田。短距離走の勝負をしてみないか?」
と言って来た。
「えっ!」
と、僕
「本当ですか?」
と原田が答えた。
「世界陸上だ。やってみろ」
久保先生は、軽く言う
「制服ですよ。着替えもないし」
原田が言う、先生は
「そのままで良いだろ。どうせ、運動靴を履いているのだから」
と言って来た。
僕も原田も、普段から制服に運動靴で通学していて、今回も海外旅行だと言うのに、やっぱり2人共、運動靴だった。
他の男子は、革靴が多かった。
「仕方ないか」
と原田
「やりましょう」
と僕は言い、制服のワイシャツを脱いだ。
「浦河」
僕の名前を呼び、松本さんが両手を差し出す。
「制服ちょうだい。持ってるから」
彼女は、僕の制服を手に取り
「頑張ってね」
と声を掛けてくれた。
僕は
「どうかな?」
と言って、グランドに向かった。
その頃原田は、近藤に制服を預けていて
「松本さん、俺には声援無いの?」
なんて言っていた。
そのセルフを聞いた、赤井が
「原田、頑張れよ」
と声援を送る。
「ハイハイ。俺には男からの声援しかないですよ」
原田がそう言って、ふて腐れた時、隣にいた、辻本さんが
「原田君、頑張ってね」
笑顔で声援を送ってくれた。
その声援を受けた原田は
「ヨッシャー。やる気が出て来たー」
と叫び、僕と一緒に準備運動を始めた。
2人対2人の、100メートル走での対決となった。
4人がスタートラインについた。
僕も原田も、
『やるからには負けられない』
そう思っていた。
スタートの合図のピストルが鳴り、4人が走り出す。
「がんばれー」
「行けー」
「負けるな」
声援が飛んでくる。
その中に
「浦河ー、頑張ってー」
と大声で応援している、松本さんの声が聞こえていた。
相手の高校生の応援も、凄いものがあった。
まさに、アウェイ、そんな感じだった。
僕は懸命に走った、しかし、相手の生徒も走るのが速かった。
ゴール
結果は
僕は何とか、1位でゴールする事が出来た、原田は4着だった。
「速いなー」
原田は言う
「本当だよ、危なかった。負けるところだったよ」
僕は言った。
「違うよ、相手の事じゃないよ。浦河の事だよ。相変わらず、走るのが速いな」
原田は言った。
「何だ、相手の事じゃないのかよ」
「そうだよ。浦河も制服のズボンなのにな。やっぱり、速いよ」
僕達が話をしている時、相手の生徒と通訳の人がやって来た。
「走るのが、とても速いですね。僕の名前はヨン・ホンソクと言います」
「負けました。僕はぺ・テヒョンです」
2人は自己紹介をしてきた。
「たまたまですよ。お二人とも速いですね。僕は浦河と言います」
「原田です」
僕達も挨拶をした。
ヨンと言っていた生徒が
「今晩の交流会には、僕達2人も行してますくので、又その時、会いましょう」
と言って来た。
「そうですか。楽しみにしてます、夜に会いましょう」
僕はそう言うと、原田と一緒にグランドを出て、みんなが待っている場所まで、歩いて行った。
「良くやった」
「スゲーな」
「浦河、格好いい」
近藤や辻本さん達が、声を掛けてきて、久保先生も
「浦河、良く走ったな。制服のズボンを履いたまま走って、まさか1着になるとは思わなかったぞ」
何て、言って来た。
「じゃあ、走らせないで下さいよ」
僕が言うと
「他の国の選手と走るなんて、国際大会にでも出場しないと、経験出来ない事だから、良い経験になったろう」
と言って来た。
「それは、そうですけど」
原田が言う。
「良い経験をしたのだから、文句を言わない事」
先生はそう言うと、僕達から離れて、相手高校の先生の所に行った。
入れ替わるように、松本さんが
「はい浦河、制服」
そう言って、微笑みながら、制服を差し出した。
「ありがとう」
僕は、制服を受け取った。
「凄かったね。1位だよ」
制服を渡しながら、松本さんは言う
「松本の応援が、効いたんだよ」
「そんな事・・・ないよ。凄い声援の声だったから、私の声なんて、聞こえないよ」
松本さんは、うつむきながら言った。
「そんな事ないよ。僕には、松本の声が聞こえていたよ」
「本当に?」
「うん」
この時僕は、素直に自分の気持ちを話した。
原田も辻本さんから、制服を受け取ったが、汗をかいていたので、僕達はワイシャツをそのまま手に持っていた。
授業の見学が終わり
「みんな、バスに戻るように」
久保先生が言う。
僕達は、先生に言われバスに乗り込み、学校を後にしたのだった。
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