第2章

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第2章

翌日 新しいクラス発表があるので、僕はいつも通学に使っているバスより、少し遅いバスで登校した。 何故かと言うと、早く学校に行って、新クラスの発表を待つより、既に発表されている掲示板を見るつもりでいた。 僕が彼女に着いた時、玄関の前に新しいクラスの書いてある掲示板が用意されているのが見えた。 そして、掲示板の前には同級生達が騒ぎながら、自分の名前を探していた。 僕は、人ごみの後から掲示板を見て、自分の名前を探した。 「何組かな?」 自分の名前を探していると、原田が後から近寄って来るなり、僕の肩を叩くと。 「よぉ、我が腐れ縁の友よ。また、同じクラスだよ」 そう言って来た。 「本当かよ。何組だ?」 「2組だよ」 原田は掲示板の方を指差しながら、教えてくれた。 僕が掲示板を見ると、 2年2組 担任 久保 雄二 赤井 正幸 伊藤 慎吾 浦河 隆二 ・・・・・ ・・・・ 倉田 誠 原田 達也 ・・・・・ はっきりと、僕と原田の名前が書いてあった。 「本当だ。また、一緒のクラスかよ」 ガックリと肩を落として見せた。 「そんなに喜ぶなよ。担任が久保先生だし、良いんじゃない」 原田は言った。 僕達の担任になる久保先生とは、陸上部の顧問をしている先生で、大学時代には全国大会の短距離走で優勝した事もある、実力派の先生だった。 実は、僕がこの学校を選んだ理由の一つに、久保先生の存在があった。 全学年の体育を担当していて、僕は同じ短距離の選手と言う事で、何かと面倒を見てもらっていた。 僕が 「そうだな。原田と言う、変な奴も同じクラスに居るけど、担任の先生が久保先生だし、良しとしよう」 と言うと 「そうそう、また1年宜しく頼むぜ。相棒」 「来年も合わせると2年だろう。それより、誰が相棒だよ」 そう答えると、僕等は掲示板の前から離れて、教室に向かって歩き出した。 僕は掲示板から離れながら、同じ位になる女の子の名前を見た。 五十嵐 淳子 近堂理恵 ・・・ 辻本 美咲 ・・・・ ・・・・ と有り。その中に、気になる名前を見つけた。 その子の名前は 松本 朱音(あかね) と言う名前の女の子だった。 1年の時は隣のクラス、出身中学も違う女の子だけど、僕が密かに気になっている女の子だった。 体育祭の時にあった、ラケットにバレーボールを乗せて運ぶ競技で、落としたボールを走って追いかける姿が、まるで 『子猫』 の様に見えて、可愛いかった。 その時、体操服に書いてあった 【1の1 松本】 と言う名札を見て、彼女の名前を知ったのだった。 それからは、廊下などですれ違ったりする時等、挨拶位はしていたけど、改まって話をした事は無く、ただ 『可愛いな』 と、思っていただけだった。 彼女に告白するなんて事は、かんがえた事は無かった。 『好き』 なのか、ただの 『憧れ』 なのかは、分からないけど 『一緒のクラスになれたら良いな』 と、思っていた女の子だった。 その子の名前が、僕と同じクラスの名簿に載っているのが見えたのだった。 僕は近くに居る原田に気が付かれない様に、小さくガッツポーズをした。 ところが、その気配を感じたのか 「ん。どうかしたのか?」 前を歩いている原田が立ち止まり、振り返りながら僕に聞く 「何でもない。何でもない」 僕は慌ててそう言うと、原田の背中を押して教室に向かった。 僕達2年の教室は、校舎の2階にあった。 僕と原田は2年2組の教室に入った。 中に入り教室を見回すと、クラスの半分は1年の時と、同じメンバーだった。 「また、同じだな」 近くの席に座っていた、伊藤に話しかけながら、僕と原田は空いている席に座った。 そして、松本さんを探した。 彼女は、友達と窓際で何か話をしていた。 「浦河。誰を探して、いるんだよ」 原田が言う 「だ、誰も探していないよ」 僕はちょっと、慌てながら言う 「本当かー?」 「本当だよ」 「掲示板を見た時から、何かおかしいんだよな」 「そ、そんなこと無いよ」 僕は、否定する 「気になる女の子でも居るのか?」 原田は更に追求して来た。 「い、いないよ」 「そおか?昔から、この手の話をすると、浦河は慌てるんだよな」 原田とそんな話をしていると、担任の久保先生が教室に入って来た。 先生が教室に入って来たのを見て、椅子から立ち上がり 「お早うございます」 と挨拶をした。 先生は教壇に上がり 「お早う。今年1年間、このクラスを担任する事になった久保だ。みんな、宜しく頼むぞ」 と挨拶をした。 「はい」 先生の挨拶を受け、僕達は大きな声で返事をした。 久保先生は、普段はジャージ姿でいる事が多く、と言うかジャージ姿しか見たことが無かったが、今日はスーツを着ていた。 また、久保先生は職員室に居ることはほとんど無く、体育館の2階にある、体育教官室に居る事が多かった。 体育教官室とは、体育の先生が普段居る部屋だけでなく、何か問題を起こしたりした生徒が度々呼ばれて、お説教を頂く、ありがたい場所にもなっていた。「始業式が9時からあるから、みんな体育館に集まるように。その後、教室に戻って、係や班を決めるから。それと、今日の日直だけど、名前順で1番の赤井からやってもらうから」 先生が言うと、赤井は 「はい」 と返事をした。 「先生、今日はスーツを着ているのですね。スーツなんて持っていたんですか?」 僕が声をかけると 「始業式だからな」 と僕に向かって言い 「みんな、時間に遅れないよう、体育館に集まるように」 先生は教室を出て、体育館の方に歩いて行った。 僕が壁に掛かっている、壁掛け時計を見ると、8時50分を指していた。 「もう行こうか?」 原田に声をかける 「まだ、早くないか?」 原田が言う。 僕達の教室から体育館までは、歩いて2・3分でついてしまう距離だった。 僕が 「5分前行動だよ」 と、言うと 「まだ、10分前だよ」 原田が言い返す 「じゃあ、10分前行動だ」 「それじゃあ仕方ない。体育館に行く事にしますか」 そんな事を話しかけながら席を立つと、体育館に向かう為に教室を出ようとした。 「何だ。もう行くのか?」 赤井が声をかける。 「早めに行こうと思ってさ」 僕が答えた 「そうか。じゃあ、俺も行こうかな」 赤井も席を立った。 すると、教室に居た同級生達も、僕達につられるように席を立ち、教室を出ると、体育館に行き始めた。
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