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第3章
式典の恒例である、校長先生の長い長い、ありがたいお話しが有り、各先生の話が終わると、始業式は何事もなく終了した。
僕達は体育館から教室に戻って来ると、適当な席に座っていた。
教室の中は、ざわついている。
教室の扉が開き、久保先生が教室に入って来た。
「起立」
「礼」
「着席」
赤井が号令を懸けた。
久保先生は、教室の中を見回して
「今から、班分けとクラス委員を決めるからな。先ずは班分けをするけど、男女一緒になる班を自分達で作ってみろ」
と、言った。
「分かりました」
「じゃあ、やってみろ」
「はい」
僕達は部屋をすると、班作りの為に好きな者同士が、ガヤガヤと集まり出した。
「浦河、一緒になろうぜ」
隣の席に座っていた原田が、直ぐに声をかけて来る
「良いよ」
僕も、直ぐに返事をした。
「俺も同じ班に、入れてくれよ」
そう言って、1年の時は隣、クラスだった
近藤和幸
がやって来た。
近藤は写真部に所属していて、運動は苦手、性格はちょっと我が強くて威張る事があるけど、僕達とは中学が同じと言う事で仲は良かった。
その近藤がやって来た。
僕と原田は
「良いよ」
と返事をし、更に原田が
「あとは女子3人と、一緒になろうぜ」
と、目を輝かせながら言ってきた。
僕も近藤も、原田の意見に異論を挟むつもりはなかった。
何故なら、この班が、今年1年間の授業や体育祭、修学旅行等のイベントを一緒に過ごすメンバーとなるので、やはり男女の数が一緒の班にしたかった。
僕達が、誰かいないかな?と、辺りを見回していると
「原田君。私達と一緒の班になってもらえる?」
と言う声が、後ろの方から聞こえて来た。
僕達3人が一斉に振り返った。
そこには、僕と原田が1年の時に一緒のクラスだった
辻本 美咲さん
が声をかけて来ていて、その横には去年は隣のクラスだった
鈴木 尚子さん
それと
松本 朱音さん
が立っていた。
「私達と一緒の班で良い?」
鈴木さんが聞いて来た。
原田が
「お待ちしてました」
なんて答えていた。僕も
「今から、3人を呼びに行こうと、思っていたのに」
冗談ぽく言った。
「宜しくお願いしますね」
松本さんが言う。
「こちらこそ」
僕達は、声をそろえて挨拶をした。
この3人の女の子達は、1年の時から仲が良くて、放課後になると、いつも図書室や音楽室、それとお互いの教室に3人集まっては、話をしている姿を何度か見たことがあった。
『相変わらず、仲の良い3人組だな』
僕はそう思っていた。
班が出来た所で、近藤が
「先生。班が出来ました」
と、言うと
「じゃあ、班長を決めてくれ」
先生が言う
僕達は机を寄せると、班長を決める、話し合いを始めた。
「誰が班長になる?」
僕が言うと
「班長は、男子でお願いね」
すかさず、辻本さんが言い返す。
「そうね。やっぱり班長は、男子だよね」
他の2人も賛成しながら、僕達を見る
「じゃあ、じゃんけんで決めるか?」
原田が提案する
「そうするか」
近藤が言い、僕が
「じゃあ。小さな声で、せーの」
と音頭をとる
「最初はグー、じゃんけんポン」
「ポン」
「ポン」
「ポン」
3人の女の子が見守る中、班長を決める大事な一戦が繰り広げられていた。
「じゃんけん、ポン」
その次の瞬間に、班長が決まった。
僕の右手はグーを出し、原田もグーを出した。
5人の視線が一ヵ所に集まった。
近藤はチョキを出していたのだった。
「決まりー」
原田が言う。
「あぶねー」
僕も言う。
近藤は、自分の右手を見ながら
「仕方ないなー。俺が班長をやってやろうじゃないか」
いつもの様に、強がりを言う。
「はい、お願いね」
僕はさらりと言った。
「それだけかよ」
「他に何か、言い方ある?」
「ない」
近藤は、諦めた様に言った。何故、班長になるのをみんなが嫌がるかと言うと、班長として班員をまとめるのは勿論だけど、クラスや学校の行事等で放課後に残されて、話し合いや手伝いをする事があるので、あまりやりたくない役職だった。
僕達の班が出来て、班長が決まった頃、次々と他の班も決まっていった。
各班が出来上がり、机の並び方を班毎に決め手行き、僕の班は男子と女子が机を並べるようにして座る様にした。
みんなと話し合いの結果
原田と辻本さん
近藤と鈴木さん
そして
僕と松本さん
が、机を並べる事になった。
僕は自分の席に座ると、隣に居る松本さんに
「よろしく。始めまして、かな?」
と、改めて挨拶をした。
「浦河君だよね。陸上部で短距離を走っている」
松本さんが聞いて来た。
「そうだけど。どうして僕の事を知っているの?」
僕は不思議に思って、彼女に聞いてみた。
「1年の時、何度か廊下で挨拶した事あったし。放課後に走っている姿を、音楽室から見た事があって、美咲ちゃんに「いつも速く走っている人が居るけど、美咲ちゃんのクラスの人だよね。良く知っている人?」って聞いた事があったの。その時に浦河君の事を、教えてもらったの」
「そうなんだ」
僕は、彼女が挨拶した事を覚えていてくれた事、僕の事を知っていた事を聞いて、なんだか照れくさくなった。
「よろしくね」
松本さんがポニーテールを揺らしながら、頭を軽く下げた。
「こちらこそ」
僕も挨拶をすると、いつも不思議に思っていた、髪型について聞いてみた。
「松本さんって、いつもポニーテールにしているよね」
「あっ、知っているんだ」
「ポニーテール、良く似合っているね」
僕は少し照れながら言う。
「私、この髪型、気に入っているの。誉めてくれてありがとう」
彼女は、微笑みながら言ってきた。
そんな話をしているうちに、クラスの委員を決める話し合いになった。
僕も松本さんも幸か不幸か、何も係をする事はなかった。
『彼女と同じ班で、1年間過ごして行ける』
そう決まったこの時でさえも、僕は彼女に対する自分の気持ちがはっきりとしていなかった。
ただ、同じクラスになれて良かったと思っているだけだった。
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