第14章

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第14章

修学旅行から帰って来てからも、僕と松本さんの関係は相変わらずだった。 旅行に行く前より、一緒にいる時間は長くなったような気がするけど、特に変わった事もなく 【友達以上恋人未満】 の関係だった。 そうそう、僕の周りで1つ変わった事が起きていた。 なんと、原田と辻本さんが、つき合い始めたと言うのだった。 修学旅行から帰って来た、最初の土曜日の放課後の教室で、原田本人から直接聞いたのだった。 「浦河には、話しておこうと思うんだ」 そう、話を切り出して 「前から気になっていたしな。たまにデートとかしていたけど、ちゃんとつき合いたくてさ・・・・。修学旅行の時に、告白したらOKしてもらえたんだ」 と、嬉しそうに言って来た。 僕が 「そうか。部活が無い土曜日に早く帰っていたのは、辻本さんとデートをしていたのか」 「ああ、そうだけど」 「気がつかなかったよ。それで、いつ告白したんだよ」 聞くと 「ロッテワールドで、パレードを見ている時にさ。浦河達と別れてしばらくは、4人で行動していたけど、色々な理由をつけて、和幸達とは別行動になって、美咲と2人で行動していたんだ。その時にさ」 原田は言った。 僕が松本さんに告白しようかどうか、考え迷っている時、原田は積極的に行動して、恋を実らせていたのだ。 「よかったな」 僕が言うと 「浦河こそどうなんだよ?あのあと2人で、ずっと一緒に居たんだろう。告白したのか?」 と聞き返す 「イヤ、してないよ・・・」 「早く、松本ちゃんに告白してやれよ。可愛そうだろう」 急かす様に言う。 「何でそんなに、人の事を心配するんだよ。松本とは、このままの関係でも良いと思っているけど」 僕が言うと 「美咲がさ、お前達2人の事を心配していたんだ。前の日の夜に、美咲と鈴木さんから、告白しなよって言われたんだろ」 「知っていたの?」 「ああ、告白した後に、美咲に聞いたんだ。交流会の後に、松本ちゃんの事で話をしたってな」 「聞いてたんだ。それより原田、辻本さんの事を、早速名前で呼び捨てとは、仲がよろしい事で」 僕は、からかってみせた。 「俺達の事は、良いの」 原田は強い口調で言う、僕は 「このままで良いんだ。松本とは仲好しの同級生のこのままで・・・、このままの関係で・・・」 そう言った。 「このままで良いわけ無いだろう。松本ちゃんとあれだけ一緒にいて、仲が良いのだから、さっさと告白すれば良いだろう。2人の様子を見ていれば、絶対に大丈夫だ・・・・」 原田はここまで言うと、一瞬台詞が止まり、僕を見て 「あっ、まさか浦河、中学の時の事・・和美ちゃんの時の事をまだ・・・」 原田は僕が何故、松本さんに告白しないのか、気がついたみたいにだった。 何故ならあの時、僕に告白しろと言っていた中に、原田も居たのだった。 「やっぱり、気がついた。原田なら気がつくよな」 僕は言う 「そうだ、今気がついたよ。中学の時と同じ状態か」 「そうだよ。あの時と・・・告白して、ふられた時と、全く同じ状態さ・・。このまま告白しないでいた方が、仲の良い同級生で終ることが出来る、1番良いパターンかな」 「そんな事・・・」 原田の台詞を遮り、僕は話を続ける。 「中学の時と違うのは、今の2人が同じ班にいるって事さ。前と同じ返事をもらった時に、どうしたら良いか分からないし、同じ班だから、告白の後もぎこちなく成りたくない。残りの高校生活も1年以上、同じクラスに居ることになるし。それに・・・それに、どんなに仲が良くても、必ずつき合えると・・・恋人同士になれると、決まっているわけでもない」 と言った時だった。 教室のドアが開き、辻本さんが教室に入って来ると、明るい声で 「原田君、ここに居たの。一緒に帰ろう」 原田を誘った。 「ああ、そろそろ帰ろうか」 原田が答える。 「浦河君は、まだ帰らないの?朱音ちゃんは用事が有るからって、もう帰ったよ」 辻本さんは教えてくれた。 「知ってるよ。今朝、本人から聞いていたから」 僕は言う。 「なーんだ。知っていたの。それよりも、修学旅行のあの日、朱音ちゃんに告白したの?」 と聞いて来たので 「してないよ」 と言うと 「何でー。あんなに仲が良いのに?」 不思議そうに言いながら、僕達の側によって来て、僕の近くに有る椅子に座ると、僕を見上げた。 僕は、辻本さんを見ながら 「僕が臆病だからさ」 そう答えた。 「臆病って、どういうこと?。朱音ちゃんに告白しない事と、何の関係が有るの?修学旅行の時に、告白するんじゃなかったの?」 辻本さんが言った時 「美咲っ」 原田が声をあげた 「何?」 ビックリしたように、原田を見る 「良いよ原田、そんなに言わなくても。美咲ちゃんには、色々心配してもらっているからさ。話を聞いてもらっても」 僕はそう言うと、中学の時に僕が体験した事を話し始めた。 辻本さんは、黙って僕の話を聞いていた。 「・・・そんな事が、あったんだ」 辻本さんはそう言うと、また黙ってしまった。 原田も黙っている。 教室の中を、静かに時間が流れて行った。 辻本さんが、静かに 「でも、その和美って人と、朱音ちゃんは違う人だよ」 と言った。 「それは、分かっている・・分かっているけど・・・」 僕は言う、原田も 「あの時は、俺達も悪かったけどな。浦河と和美ちゃんの仲が、うらやましかったんだ。ちょうど、今の松本さんとの関係みたいに。だから俺達には、面白半分みたいな所があったんだ。・・・でもよ浦河、松本さんは和美ちゃんとは違うよ」 と言って来た。 「浦河、このままで、このままの関係で、良いわけないよね」 辻本さんは言う 「そうだね」 僕が答えると 「私が朱音ちゃんに、それとなく浦河の事をどう思っているか、聞いてみようか?」 と提案してきたけど 「イヤ、その時になったら、自分で言うから」 と断った。 「うん、そうだね、その方が良いよね?私、応援するから」 「そうだな、応援するよ」 2人は、そう言ってくれた。
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