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【Side 夜白】
部活が終わると図書室に行く。
それが俺の日課だ。
ドアは開いているのに人がいないのはいつものこと。
俺は知っている。
だから、立ち入り禁止と書かれたプレートがかかったドアをノックもせずに開ける。
そこには、男が2人。
雑誌を読んでいるのと、本を読んでるの。
「秋、帰ろ」
俺はそのうちの本を読んでる方に声をかけた。
聞こえているはずなのに動こうとしない彼。
これは無視をしているのではない。
切りのいいところまで読んでいるのだ。
「秋、また明日」
「はい。さよなら、先輩」
やっと帰り支度を始めた秋に雑誌を読んでいた男が声をかける。
俺の存在は無視だ。
それもそうだ。
俺は彼が嫌い。
彼も俺が嫌い。
所謂、犬猿の仲なのである。
秋の質問に優しく笑った彼だが、その秋が先に部屋を出ると、その顔は表情をなくした。
そして俺を睨む鋭い目。
「手、出すなよ」
「そんな毎日牽制しなくても、秋が悲しむことなんかしませんよ」
彼は秋が好き。
俺も秋が好き。
俺はもうずっと昔から秋しか見ていなかった。
彼よりも、誰よりも秋を好きな自信がある。
でも、この幼馴染みというポジションを手放すつもりもサラサラない。
秋の隣は俺だけで十分なんだ。
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