図書室の紫式部

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――――――――  すっかり話に花が咲き、気付けば9時を回っていた。 「送るよ。家、近いんだろ?」  問い掛けると、ありがとう、といって、あっち、と指差した。  俺の自宅と同じ方向か。  並んで歩き出す。  図書館からゆったり歩いて7、8分程のマンション。 「ここよ。ありがとう、送ってくれて。そしてご馳走さま。またね」  ニッコリ笑って背を向けた彼女を思わず引き寄せたのは、衝動的だった。  ほら、また目をまん丸にして固まった。  ダメだ――――。 「…好きだ―――千景…」  ああ…言ってしまった…。
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