わたし・1

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 胸騒ぎがした。  こういったときは決まって何かが起こる。  焦燥だけが胸を張り裂けんばかりに拡大を続ける。  いけないと分かっていても、本能が脚を進めさせる。  光がほとんど届かない闇の中……  全てが息を殺す漆黒の世界。  その中をよどみなく脚は進んでいく。  そうしてどれだけ歩いただろうか?  気が付けば、水の流れる音がした。  さらには、ぼぅっと闇夜に浮かぶオレンジの光…… 「うそ……」  思わず声が出てしまった。  あり得ない……  こんな所に火があるなんてあり得るはずがない。  そんな……  そんなことをする人間が未だにいるのだろうか?  動悸が激しくなるというレベルの話ではなかった。  悪寒がする。  足下が竦むかのように、上体がふらつく。  それでも確かめなければならない。  それが役目であり、私の背負う業だから……  業が業を生かし……そして、私は今日もここに存在する。  運命は、私を業から逃がしてくれることはない。  はぁ……はぁ……はぁ………ッ  ……はぁ………はぁ……………はぁ……ッ  震えながら私はゆっくりと、足音を立てないように進む。  長年此所にいるおかげで、気配の殺し方は熟知していた。  最初は何の取り得もなかったのに、慣れというのは恐ろしいものだった。
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