30人が本棚に入れています
本棚に追加
茂みの中から、光が漏れている河原を覗きこもうとした。
「よぉ、お嬢ちゃん。なにしてんだい?」
「……ッ!?」
不意に掛けられた声に思わず飛び上がりそうになった。
視線を巡り合わせてみるが、周囲に人はいない。
思い切って立ち上がってみるが、正面にある河原にはたき火と荷物があるだけで、人の姿はなかった。
「天然かい? 上だよ。上」
少し気怠そうな声が頭上からした。
顔を上げてみると、太い幹の上に寝そべるようにして男がいた。
幹で体に隠れ顔の半分しか見えないが、少し眠たそうな表情をしている。
あぁ……確かに、今は夜もだいぶ更けている時間だ。
普通の人間では寝ていて当然の時間かもしれない。
「やれやれ、本当にこんな森に人がいるんだなぁ」
男は面倒くさそうな声を出しながら、幹から飛び降り私の前に降り立った。
「お嬢ちゃん」
半眼となり、男は至極面倒くさそうに私を見下ろしていた。
無精髭が目立ち、とても精悍という印象は持つことが出来なかった。
「は、はい……」
「君……人間?」
「え?」
胡乱げな視線が値踏み……いや、特に感情を宿さずに彼女の事をゆっくりと見ていた。
「あ……あの……」
どう答えればいいのか分からずに、オロオロとしていると、男は大きくため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!