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彼はそういい、懐からなにか白く細いものを取り出した。そして、持っている枝でそれの先っぽに火をつける。
男はそれを咥えると、深呼吸するように吸い……そして、煙を吐き出した。
「それ……なんです?」
問いかけに彼は少し目を瞬くと再び、繁々と私を見てきた。
「ふーん」
「な、なんです……か?」
「いや、珍しい子だなぁと思ってね? こいつは煙草っていうんだが、あぁそうか。この紙巻き煙草は、この国に入ってきたの最近だったけなぁ」
頭をかきながら男は納得するが、私は煙草なるものを知らない。
美味しそうに吸っているが、煙を吸っている……苦しくないのだろうか……
「しっかし……ここはなんとも不思議な場所だね」
「は、はぁ……」
「どれくらい広い森なのかは知らないけど、俺が今まで入ってきた森とはどこか違うね」
「……」
私は他の森を憶えていない。
この暗く静かな森だけど、慣れてしまえば落ち着ける場所でもあった。
「あの……」
「怪しいもんじゃないさ」
オレンジの明かりの向こう……煙をゆっくりと吐きながら応えるその姿は不気味に映ってしまう。
怪しくないと言う方が……
「おいおいおい……まいったねぇ。こんな、お嬢さんがいるなんて聞いて無かったからなぁ」
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