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暗い、暗い闇の世界。
薄暗く、うっそうと生い茂る深い森の中。
昼でも夜でも、そこに住むものは、全て息を殺し、闇に溶けるように生きている。
ゆらり、ゆらりと、風がフードを軽く揺さぶった。
今日も木漏れ日のように、真ん丸な月が出ている。
それをぼんやりと、ぼんやりと一人見上げる。
夜闇が辺りを包みだしてからだいぶ時間が経っていた。
虫の音すら聞こえない静寂な世界。
いや、孤独な世界……
闇色のローブをすっぽりと頭からかぶった少女が独り……
古木の根元に座っていた。
何をするわけでもなく、少女はそこにいる。
ただ真っ直ぐに、ただじっと……月を眺めていた。
そんな彼女の周り……
薄汚れた十字架が地面に突き立っていた。
元々は白かったのかも知れないが、もはやそのような面影はない。
黒ずみ、シミが出来るように十字架は薄汚れている。
少女の瞳は、何も映さないかのように真っ黒だった。
深い深い闇色がその瞳に宿る……
そうやって、今日も彼女は闇を見ていた……
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