プロローグ

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イシュタルド闇伯爵家の一室。 この部屋にはクローゼットに机と椅子、布の掛けられた本棚、ベッド、ベッドの横の小さな棚に明かりの魔法具、ベッドの下にある四つの木箱が置かれています。 白を基調とした壁には古代文字で『天下布武』と達筆に書かれ、子供らしい水色のカーテンが掛けられています。 そのベッドの上に気になっている人物はいます。 「うわぁー!!」 ハアハアと息を乱し、冷や汗をダラダラと流しながら、飛び上がるように起き上がった銀髪の五歳の男の子。 「坊っちゃま。大丈夫でございますか? こちらお水でございます。ごゆっくりお飲みください」 琥珀色の右眼、銀白色の左眼を持って生まれ落ちたその顔のとても整っており、彼は執事にありがとうと一言告げてから水を受け取り、喉を潤します。 「大丈夫でございますか?」 清潔感のある短く切り揃えられた暗い金髪。 赤黒い瞳を宿した青年は男の子ほどではないが整った顔で、立派に燕尾服を着こなしています。 その執事は左脇に銀のお盆を抱え、片膝をついて男の子に話しかけます。 「ありがとう、ライム。 ……ちょっと待って、なんで俺が起き上がってすぐに水くれたの」 両手にコップを持ち、男の子は執事に問いかけました。 ライムと呼ばれた青年執事は堂々と答えました。 「執事ですから」 男の子はそれに噛み付きます。 「いやいや、執事で済まないよ! だって起き上がってすぐそばにいたじゃん! え、もしかして出て行ったフリをして側にいたのか!」 男の子はコップを側の小さな棚に置き、布団で身を守るようにして執事と距離を取るようにします。 とは言え、ベットの上なのでそれほど距離を取ったとはいえません。 「いえ、声が聞こえた瞬間に台所へ向かったところ、先にメイド長がいらしており、メイド長が用意されたお水の受け取って転移してきました。 なのでタイムロスは最小限に押さえましたので早かったのだと」 その発言に男の子はため息を漏らしました。 「え、何? ライムだけでなくメイド長も反応してたの?」 「はい、主人に仕える者として当たり前です」 「……考えるのが馬鹿らしいや。まぁ、心配してくれてありがとう」 「光栄でございます、お坊ちゃま」 そう、この男の子の名前がレオ・イシュタルド。 いつ見ても面白い子です。
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