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「昨日のこと? カケルの怪我は大したことないって聞いたけど。僕だけ除け者にするからバチが当たったんだ」
昨日、カケルは足をひねって帰宅した。 純がその話を聞いたのは今朝のホームルームだった。
サッカーや陸上を得意として、余り欠席をしないカケルが休んだことを気にしていることも事実だ。
「そうよ。だから、純君も誘うって言ったのに。カケル君が無理矢理屋敷に行っちゃったの」
「君と一緒にね」
それで、純は昼休みに全貌を知った。仲間外れにされたようで少しだけ不貞腐れて今にいたる。それでも不機嫌を顔に出さないように必死で堪えていた。
「そこで、ガチャガチャする何かに襲われたのよ。あの屋敷には絶対に何かある!」
知世が声に力を入れる。純は、空気が振動したような気がした。
「そう。なら近寄らないほうがいいね。僕は理科の実験を繰り返すことで忙しいんだ」
純は時計を見た。無駄な時間を費やした。
担任の鏡に見付かるのは不味い。
五時を過ぎると理科の扉を施錠するのだ。ある程度片付けて帰る準備をするほうが優先された。
「純君。どうしてそんなに冷たいの?」
急いで片付けをする純は、知世の質問に答える余裕がない。散らかしたものを同じ場所に片付けると担任の鏡が顔を出す。
「ほら、また、時間オーバーだ。教頭に見つかったら本当に出入りできなくなるぞ」
「すいません。今、帰ります」
純は、ランドセルにメモ帳を突っ込み、知世と理科室を出た。
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