一章 理科室の住人

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 知世が疑問符を飛ばしながら後ろを歩いてくる。  カケルが知世に好意を持っていることくらい純は気が付いている。  カケルが純と遊ぶようになったのは幼稚園の時からだ。  それから、カケルの両親に連れられて天体観測やキャンプ、博物館の見学などに連れていってもらうようになった。  純は理科の実験が大好きで友達は殆ど居なかった。  カケルとは友達だと思っている純は昨日の抜け駆けは裏切りもいいところだった。 「足をひねっただけで良かったよ。知世も怪我が無くて安心した」  公園のブランコに座って、もう一度話を聞く。  屋敷のことは調べてから侵入したと知世は言った。 「うん、だけど凄く怖かったよ。いきなりガチャガチャって動き出して棒みたいなのを振り落としたの」 「ガチャガチャって、どんな形だったかわかる?」  純は話を聞いた。赤い夕焼けはゆっくりと消えていく。七時には家に帰りたい。遅くなると母親が心配するからだ。 「人の形をしていたよ。大人みたいな影が通路を歩いてきて、床を叩いたの。物凄い音だった」  知世がブランコに座って身ぶり手振りで状況を説明する。 「二人が屋敷に入ったとき、鍵はかかってた?」 「鍵? えっと。掛かっていなかったと思うよ。カケル君が開けてくれたの」
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