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「そっか。他に何か気が付いたことはなかった?」
「特には――あ、匂いがした!」
「匂い?」
「そうそう。甘いお菓子の匂い」
知世の言葉に、純は首を傾げた。
「どうしたの? なにかおかしなこと言ったかな?」
知世も首を傾げる。
「いや、なんだろう。引っ掛かったんだけど分からなくなった」
純は、もやもやとした疑問を解消しようとした。
しかし、引っ掛かったものは純の中で渦巻くばかりだ。
秋風がそっと吹いた。
純は嫌な予感に身を竦める。こうした類いの直感は大抵当たる。
虫の報せというものだ。
「純君? どうしたの?」
「知世、屋敷には近付いちゃ駄目だよ。なんだか嫌な予感がするんだ」
純は、知世に言う反面で屋敷に興味を覚えていた。
幽霊やお化けに興味はないけれど見てみたい気持ちがある。
けれども、知世を連れて屋敷に乗り込むことは危険な感じがしてならなかったのだ。
「あ、もしかして、ひとりで忍び込む気?」
「そうだよ。悪い?」
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