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雜林の最奥に建てられた屋敷を目指し、カケルと知世は歩みを進めていく。
二人が歩く度に枯れ葉が音を立てた。時おり、冷たい風が通りすぎ、落葉樹に混じった杉の木がさわさわ揺れる。
秋の夕暮れは早い。景色は闇に溶けていた。林の木々が風に揺れ、奥へと続く細道には枯れ葉が散らばる。その一面の光景すら静かな夜に呑み込まれて消えそうだった。
やがて見えてきたのは、今にも壊れそうな屋敷だ。
明治に建てられた洋館だ。前から見るととても大きく感じる。三階建に見えるが中は四階になっている不思議な洋館だった。
カケルと知世は、玄関扉から忍び込んだ。玄関の扉は開いていた。カケルも知世もそろりと屋敷に入り込む。扉が開いていたことへの疑問より、屋敷の中が見たかった。からくり屋敷の真相を知るためにやってきたのだから何か見つけたいとおもってしまう。
ネットや新聞で念入りに調べた屋敷には、現在は人は住んではいないという。ただ、いろいろな噂があった。殺人事件も起きている。ちょっとした肝試しポイントでもある。
カケルと知世が歩く廊下はフローリングだ。携帯の明かりでも分かるほどくすんだ色をしている。
廊下は所々、軋む。それほどまでに板張りの廊下は弱っていて、いつ穴が空くか知れない状態だった。
屋敷に取り付けられた窓から、細い月の光が差し込んでれてきたことを後悔した。
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