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カケルは昔の屋敷は暗いのだなと思っていたけれど、想像以上に暗かった。暗闇で目が慣れたといっても扉があるか無いかの判別しかできない。
カケルも知世も戻るに戻れなくなって、突き当たりの扉まで一直線に歩き続けていた。
窓ガラスから降りてくる月光を雲が遮る。
知世がカケルの服から腕を掴んだ。その手が震えて歩く速度が遅くなっていく。
「大丈夫だよ。扉を開いて、部屋のなかを見たら直ぐ引き返すから」
カケルは目前に迫ってくる扉を見詰めて息を呑み込んだ。
扉に近寄る度に廊下が軋む音が気持ち悪く響く。
カケルの心臓も徐々に鼓動が早くなるけれども、ここまで来て後戻りはできない。
カケルはおそるおそると把手に手を掛けた。
玄関が空いていたことにも少しだけ疑問を持っている。
深くはわからなかったが、カケルは危険を感じていたのかも知れない。
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