第2章

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俺はそんな杏を適当にあしらいつつ考える。 あのブレスレットは、確かに先週の月曜日に買ったものだ。 でも、あれは本来なら文化祭の日には存在しなかったはずだ。 文化祭の翌日である代休の日に二人で大型ショッピングモールに行ったときに買ったのだから。 そう言う意味では俺の感覚としては、杏の言うように先週の月曜日に買ったということは正しい。 だが、もし杏がこの時間の人間ならばそのブレスレットは持っていないはずだ。 だとしたら、それを持っている杏は俺と同じ時間の人間と言うことだろうか。 杏は記憶を完全になくしているのだろうか。 「なぁ、本当に今日は文化祭なんだよな」 「そうだよ、日にちも確認したでしょ」 試しに俺がもう一度聞くと杏は怒ったようにそう返した。 「ごめん、なんか記憶が混乱してて……」 杏の剣幕に少し驚いて思わず謝る。 「はあ……、まったく、本当に大丈夫??」 俺が謝ったことで毒気を抜かれたのか少し優しい声を出す。 こいつはさっきから、大丈夫?ばっかりだな。 そんなに俺は不審だろうか。 俺は少し苦笑しつつ頷いた。
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