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九月十八日。
俺は学校の五つある棟のうちの一つ、第三号棟の前で立ち止まり、その屋上を見上げてい
た。
そこには女の子が一人立っている。
柵を越えて立っている彼女の顔は見えない。
屋上への生徒の侵入は禁止されているはずだ。
許可でも取ったのだろうか。
風にあたりたくなった。
例えばそういって許可が取れるものなのだろうか。
それとも文化祭だから開放されているのだろうか。
顔が見えないので何とも言えないが、彼女はただぼんやりと地平線を見つめているようにも見えなくはない。
「なにあれ、自殺?」
俺の隣で妹がそう呟いたのが聞こえた。
なるほど、自殺か……。
そのあまりにも現実離れした単語はすんなりとは頭には入ってこなかった。
しかし、そのおかげか俺の頭は取り乱すこともしなかった。
数秒間思考が止まり、再開される。
そうか、自殺なのか。
止めにいくべきだろうか。
今から走り出せば屋上までどのくらいで着くだろうか。
もしかすると間に合うかもしれないし間に合わないかもしれない。
そんなことがほわほわと頭に浮かぶが、体は動かなかった。
おい、あれ……。
なにやってるんだ、あいつ。
え、ヤバくないか。
周りでは事態に気付いた人々が建物の下に集まり、彼女の方を注視し指をさしながら口々にそんなことを言い始めた。
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