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俺達は噂を聞き付けて集まってきた人々に周りをだんだんと固められていった。
そして、騒ぎを聞き付けた教員が数人駆けてくる。
それによって何かが起こっていると気づいたさらに多くの人が集まってくる。
集まり始めると一瞬で大きな人だかりができてしまった。
「そこの生徒、すぐに後ろに下がりなさい!」
メガホンを持ち、叫び始める教員の声。
その声は鬼気迫ってるように聞こえる。
しかし、それが人が死ぬことへの恐怖なのか自分たちの学校で不祥事が起こることへの恐怖なのか俺には判別できなかった。
声をかけられた屋上の生徒は全く動じた様子はない。
ただぼんやりとこちらを見ているように見える。
ふと、屋上の彼女と目があった気がした。
実際は表情など見えないので、相手が目を開いているかすらわからない。
しかし、そんな気が本当になぜかした。
おいおい、やめてくれよ、これから死のうとしている人と目が会うとか……。
慌てて目をそらす。
ここにきてようやく俺は少し今この瞬間が現実だと思えるようになってきた。
「あ……」
俺が現実感をとり戻すのとほぼ同時くらいに妹が声を上げた。
次の瞬間、屋上の生徒は握りしめていたであろう何かをこちらに向かって放った。
それは少しだけ重力に逆らったあと、夕日に照らされてキラキラと光ながら落ちてくる。驚くべきことに俺達にむけて。
え?え?と思わず挙動不審になりながら妹が手を開くと、軌道は変わることなくそのままそこに落ちてきた。
まるで狙ったかのよう妹の手に収まったそれは、鍵だった。
屋上とタグに書いてある。
驚いて上を見上げるが、やはりここからではその人の顔は見えなかった。
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