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「うぁ、あ……和泉先生も酷いことをする」
給食の時間になったので、隆宏が教室に移動すれば、白那がひょっこりと、疲れ切った顔で教室に来る。
思わず、まさかここまでなっているとは思っていなかったので、驚いてしまい、更に少し笑ってしまった。
「自業自得ですね、白那さん」
「いっすよ…今度……沢山苛めてあげますんで」
「……………」
「自業自得ですねー、和泉先生」
キラキラとした笑顔を白那は浮かべる。
隆宏はというと、苦笑いを浮かべることしか出来ず、その後に、大きは溜め息を吐いた。
とりあえず、給食の準備しないと。
といっても、隆宏や白那がすることではなく、生徒達がワゴンを給食室に取りに行き、教室で給食を配るといった、そんな形のものだ。
給食当番、というものがあり、今週の給食当番の子達がワゴンを取りに行く。
残った子達は教室でただ待つだけ。
「あ、和泉先生ー。これ、今日の生活ノート」
「…はい。今日は…提出が遅かったですね。なかなか、集まらなかったのですか?」
「はい…」
「わかりました。目を通しておきます」
生活ノート。
それは、言わば連絡帳みたいなもので、それプラス生徒達が日記を書く。
そういったノート。
そして、担任教師から一言コメントを書く。
担任教師になって、専門しか扱っていなかった去年に比べると、かなり忙しくなってきた。
でもまぁ、幸い、白那に手伝ってもらうことが出来るから、副担任のいない担任教師に比べれば大分、楽をしているのだろう。
「手厳しいですねー」
「………なにがですか?」
担任教師の机で、隆宏が生活ノートを開いて目を通していると、白那が隆宏に声を掛ける。
白那さんには給食当番達を見てもらっていたのだけど、
「いやいや。
少しいつもより生活ノートを持ってきてもらうのが遅いからって、ちょっと言葉が冷たいんじゃないのかなぁ、なんて思ったんですよ」
「………そういう風に聞こえましたか?」
「えぇ、まぁ。忙しいのは解りますけどねー」
「…気をつけます」
駄目だな。
生徒にまで目が回らない。
担任教師失格だ。
白那さんが担任教師だったら、また、違うんだろうけど、
小学校といえど、担任を持ったことがあるようだし。
「なんですか?じっと見て」
「ぃぇ……」
なんだかんだいって、白那さんに助けられてることが多い。
こんな、軽い感じの男なのにな。
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