新任教師

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鞄の中を確認すれば、自分の手帳は入っていない。 財布を出したときに、落としたのは間違いないようだった。 手帳を受け取り、隆宏は携帯を出し、携帯に文字を打つ。 そして、青年に見せた。 この人の頭寝癖なのかな。 凄いピョンピョンしてる。 ワックス……? なわけないか。 「…へ、?あり…がとうございました??」 会釈をして、隆宏はその場を去ろうとする。 「ちょ、ちょ、ま、待て待て待て」 グイッと腕を引っ張られ、思わず嫌そうに青年を見てしまう。 「アンタ、えっと……声。 出ないのか?」 「……………」 また、文を打って、青年に見せる。 「話すの面倒って………。 そっちの方が面倒だと思うぞ」 なんだ、コイツ。 俺に構うなよ。 手帳を拾ってくれたことには感謝するけど、、 「………」 「んあ?…声、出したくない……?? いや、え?? アンタ、変」 変? 俺に話しかけるアンタの方が変だ。 「………」 そして、面倒なので、学校に向かおうとする。 だが、青年は隆宏の向かう先を塞いでくる。 通してくれない。 『なんですか?』 また、携帯を見せつける。 「名前は?」 は? 『……普通、今知り合った人の名前、聞きますか?』 「俺は、白那郷太。アンタは?」 はくな……きょーた?? いや、名前じゃなくって。 なんなの、コイツ。 本当、なんなの。 『……和泉隆宏…』 「いずみ…たかひろ…。 うん。和泉隆宏か。 またな、和泉」 白那だとかいう男は、人の名前を聞き出すなり、手を振って、どっかに走っていった。 ほんと、なんなんだよ。 (……また…?)
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