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「和泉先生が遅刻とは、珍しいですね」
「………すみませんでした」
「はぁ…。それと、白那先生。貴方に限っては、まだこちらに新任したばかり。このようなことをされては、後から困るのは貴方ですよ」
「すみません。次からは気をつけます」
「…必ず、このようなことはお二方共々、今後しないでください」
「はぃ……」
バタン──
「はぁ…」
教頭先生に生徒指導室に連れられ、白那と一緒に隆宏は注意を受けた。
遅刻してしまったことは、本当に悪いと思ってる。けど、遅刻してしまったのは、そもそも、この人の、白那さんのせいであって。
なんて。
そんなことを言ったところで、言い訳など、世の中には通じる訳がないことを知ってしまっている隆宏は、口にはせず、溜め息だけをこぼし、白那と距離を取りながら歩く。
なんなんでしょうか、ほんと。
二限目の休憩時間、か。
20分程ある休憩時間は、生徒達も少し騒がしい。
「あ、あの……和泉先生」
「はい」
後ろから声を掛けられ、思わず振り向く。
そこには女子生徒がいる。
「佐賀之さん。どうかされましたか?」
「あの……昨日の宿題を」
女子生徒は手に持っている理科のノートを隆宏の前に出す。
それを隆宏は受け取る。
「次からは提出期限をしっかり守るようにしてくださいね、佐賀之さん」
「はい、気をつけます。
あの、それで和泉先生」
「他にも、なにか?」
「次、和泉先生の授業ですよね。今日は、理科室使われるんですか?」
「え?あー……いや、今日は大丈夫です。教室で準備をしておくよう、伝えておいてください」
「はい、わかりました。ありがとうございます、和泉先生」
佐賀之の用は済んだのか、お礼を言ってこの場から去っていく。
隆宏はノートを見て、止めていた足を進める。
「和泉先生は信頼されてるようですね」
「……………」
白那は、なんかしらないけど、先に行かないし。
教員室の扉を開けて、自分の席にへと行く。そこで、佐賀之のノートを開く。
「………」
「良く、纏められていますね」
「…………そうですね」
確認をした、というスタンプを押し、佐賀之のノートを閉じる。
「…和泉先生、珈琲飲みますか?」
「……いえ、いらないです。次、授業ですし」
「あぁ、そうですね」
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