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「……………た、楽しそう……にみえますか…」
「うん。だって、いつもよりお話してるじゃないですかー」
「……そう………ですか…。
私、いつもより話てますか?」
「いや、俺に振られても困るんですけど。去年の和泉先生を知ってる訳じゃないんですし」
「………すみません…」
「あ、でも、俺と出会った頃に比べると良く話してくれるようにはなったと思いますよ」
「…………………………気のせいだと思いますが。白那さんは少し過剰過ぎるのだと思いますよ」
「え、なに。なんで怒ってるんですか」
「え……?…怒ってるように見えますか?」
「妙に饒舌なところが」
「気のせいです」
「即答する辺り、やはり怒ってる気がします。あ、それとも、今朝のことまだ怒ってるんですか?」
「白那さん。授業後、理科準備室に来てください。科学の中の科学を指導してあげますから」
「………………すんません」
「やっぱり、仲良いじゃないですか、和泉先生と白那先生」
生徒達がどこか楽しげに笑っている。
なぜ?
なんて思うけど、
そんな生徒達を見ていたら、思わず笑みをこぼしてしまっていた。そんな隆宏を見て、白那もまた、笑みをこぼす。
「……あ、し、質問は?もうないかな?」
「あ、じゃあ、和泉先生は何で教師になろうと思ったんですか?」
まあ。
現実に引き戻されるのは早かった。
「ぇ、……な、なんで、ですか………」
子供が好きだから、なんて嘘を吐いたところで、どう考えても俺が子供好きに見られてる訳ない。
なんて嘘を吐く?
なんの嘘ならバレない?
どうすれば、
「………本当は、学者を目指していました。…ですが、友人に譲ったんです。
それで、教授の同期の方が教師をしていて、スカウトされたんです。
ですので………目指して教師になった訳ではありません。少しばかり、白那さんや他の先生方には失礼だとは思いますが」
少し、嘘を交えさせながら、ほぼ本当のことを結局話してしまった。
嘘は正直、苦手だ。
嘘を吐いても、いつもバレてしまう。
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