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「………うぅ、わ」
生徒達の微妙な反応。
はぁ。
なんで正直に吐いちゃうんだろ。
理科準備室の椅子に寄りかかり、デスクの上に置いてあるコップの飲み口を指でなぞる。
そして、ため息を吐いてしまう。
コンコン──
ガチャ──
「…………」
そうだ。
呼んだことすっかり忘れてた。
もぅ、説教する気すら起きない。
「………帰ってもいいですよ」
「せっかくのお誘いをムゲにするもんですか」
にっこり、と。
白那さんの笑顔。見飽きたなぁ。
「よいしょ」
適当な椅子を白那は引っ張ってきて、隆宏の近くに座る。
にこにこしてる。
「あれ、本当ですか?」
「……………?」
カタカタカタ──
パソコンで文字を打ち込む。
なんか、話すのめんどくさい。
『なんの話ですか』
「……久々に出たな、これ。
なんの話ですかって、教室で話してたことですよ。あれだと教師になる気なかったみたいな感じじゃないですか」
「…………」
『本当のことです』
あーぁ、めんどくさい。
「ま、マジなんですか、あの話」
『マジです』
「が、学者を目指していたっていうことも、ですか?」
『嘘じゃないです。
学者を本気で目指して、自分は学者になるものだと思っていました。
学者と言っても、科学オンリーですが』
「………なら、なんでそんな夢を譲ったりなんか」
『それは嘘です』
「は……、?え、嘘?」
『譲る訳ないじゃないですか。
学者にならなかったのは……、大学に通えなくなったからです』
「………ぇ、?な、なにそれ。金?」
『そうですね。金です』
「…なんだよ、それ」
『白那さん。世の中は金で回ってるんです。こんなの、良くある話じゃないですか。
まぁ、お陰でこういった良い職に巡り会えたのですから、感謝しないといけないですね』
「感謝ってなんにだよ」
あれ……、
なんか、怒ってる??
なんで?
『それはもちろん、世の中の理というものに、じゃないですか?』
まぁ、半分は恨んでたりするんだけど。
「ざけんな。
和泉の夢ってそんなもんかよ。
学者の夢なんてそんなもんだったのかよ」
「…………………」
なんで…
アンタが怒るんだよ。
俺が怒れなかった分、代わりに怒るかのような、そんなの。
やめろよな。
俺だって…好きで諦めたわけじゃないのに。
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