性癖

19/63
前へ
/272ページ
次へ
美術…か。 そういえば、ここの学校は美術面に関しては力がかなり入っていると聞いたことがある。 だから、ああいった、朔君…のような子がいるのも珍しくはないか。 モデルになって欲しいと言われたのは、今回だけじゃない。 何回か、言われたことがある。 はぁ、…なんで俺ばっかり。 モデルなんてなにして良いか解らないし、正直、引き受けたい話ではない。 めんどくさいし。 けど、断ったら断ったで、後が怖いんだよなぁ。 ほんと、やりづらい仕事だ。 「和泉先生」 「……?」 教員室でゆっくりと珈琲を飲んでいると、美術専門の原田槙が声を掛けてきた。 普段、他の教員と会話をしないので、少し驚いてしまう。 「明日、三年生に転校生が来るんです。桐谷朔君と言って、美術に力が入ってる子なんですけど、お会いになりましたか?」 「………廊下で…少し……」 なんでこんなこと聞くんだ? 「和泉先生さえ良ければなんですけど、桐谷君が…もし、和泉先生にモデル……などを頼んだら、引き受けてあげてはもらえませんか? 桐谷君の絵を見せてもらったんですけど、とっても絵がお上手で、なので…」 「…………」 なんだ、その話か。 めんどくさいな。 「将来的にも…」 教師とは本当に、めんどくさい。 「……わかりました」 「本当ですか!?ありがとうございます、和泉先生」 そもそも、なんで俺に頼むんだ。 別に、俺じゃなくても良いだろうに。 「………はぁ…」 「あ、それはそうと、和泉先生、最近、白那先生と仲が宜しいですよね。 やっぱり、同い年には気を許しちゃう感じですか?」 「………ぃぇ…そういう訳では…」 「でも、仲が良いのは良いことですよね!」 なんなんだ、この人は。 前々からうるさい人だとは思っていたけど、まさか、ここまでとは。 めんどくさい人…。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

279人が本棚に入れています
本棚に追加