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「………」
学校の給食は、正直好きじゃない。
生徒達の健康を考えて作ってくれているのだろうけど、野菜は正直。
あまり好きではない。
だから、嫌いな野菜があると、テンションが下がって、いつも、どうやったら生徒達にバレないように避けるかを考えてしまっている。
「…?和泉先生、手が止まってますけど、どうしたんですか?」
「…………」
そうか。
白那さんに押し付ければいいか。
「白那さん、耳貸してください」
「…ん?なんだいなんだい?」
こうすれば、生徒達には見えない。
嫌いな野菜を箸で摘まんで、白那に隆宏は押しつける。
「うわ…」
白那は苦笑い気味にそんな声を漏らす。
ちゅ──
「っ~──」
い、今……頬に…キス…──
「無防備ですねぇ」
どうせ誰も見ていない。
そう言いたげな顔をしている。
「も…もし……見られてたら…」
「和泉先生がそんな反応していたら、バレてしまうかもしれませんね」
「場所をわきまえてください」
頬にキスされたぐらいで、なに動揺しちゃってんだよ。
顔赤くなっちゃ、生徒に怪しまれる。
あぁ、くそ。
なにしてくれてんだよ。
「それと。
好き嫌いは良くありませんよ、和泉先生」
「………………嫌いなんですもん」
「もんって、貴方ねぇ……─。
こ、今回だけは見逃してあげます」
あ、なんか、白那さんの弱い部分。
解ってきたかも。
はは。
この人も可愛いよなぁ。
はぁ。
なんでこんな人のこと、可愛いとか思っちゃうんだろ。
白那さん…男なんだけどなぁ。
はぁ。
それに、可愛くない時は可愛くないし。
「はぁ…─」
「だから漏れてますって」
「白那さんのせいでしょ」
「えっ?俺なんすか?」
「他に誰がいるんですか」
「すんません」
そして。
明らかに生徒達の前のキャラと、俺に対してのキャラが違う。
生徒達の前では、おちゃらけてんのに。
はぁ。
「……白那さん。
私との交流ではなく、生徒達と交流を深めてはいかがですか?」
「あ、そっすね」
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