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するとキッチンからお母さんが言った。 「そう言えば、隣の尚希(なおき)くん、昨日帰ってきたって」 私はその名前にパチッと目を開けた。 「あんたも昨日帰ってくればよかったのに」 「……わざとずらしたのに」 「え?」 ぼそっとつぶやいた言葉にお母さんが聞き返した。 しかし私は「なんでもない」と言って靴を脱いだ。 持ってきた荷物をそのままに階段を上る。 自分の部屋のドアを開けると中に入り、背中で勢いよく閉めた。 3階まで上って、上がった息を肩で整える。 ……会いたくもない。あんなやつ。 窓から見える隣の家の屋根。 私はそっと近づいてカーテンを閉めた。
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