やっくんのバレンタイン

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その有様にかほは呟く。 「ああ、りおたんが見なくて良かったわ」 館の家具はりおの好みの高級家具シリックだ。 その家具が、八雲汁でベトベトになり更にはチョコ汁で所々溶けている。 早々に千冬の監視にりおを向かわせたマチルダにかほは流石、年の功だと思った。 魔女という存在は人より長生きする場合がある。 今、館に滞在している魔女の中で実年齢と見た目が一致しているのは数名のみ。 マチルダのように千年以上生きている魔女はやはり戦った場数が違う。 「こんな時、ゆきたんが仕事で留守なのは辛いでつ」 ゆき女が居れば凍らせて捕獲出来るのだが、今回はそれは出来ない。 「かほ、出口を結界魔法で塞いで。流星はこのベトベトを凝固魔法で固める。あたしはその時間稼ぎをする」 マチルダは二人に言うと、股間にピノを入れて逃げようとした八雲の足に、椅子を投げた。 「うわぁ、マッチーのツルペタぁー」 「倒れる時に言うことかぁ」 倒れた八雲の上にマチルダがシーツを掛け動きを鈍らせる。 シーツがみるみる油を吸いギトギトになる。 その上に箪笥を魔法で動かし乗せると全裸の八雲の捕獲に向かう。 八雲が捕まったので偽八雲一人がピノを追い掛けていた。 ぴぃーぴぴぴぃー。 偽八雲のチョコ汁がピノ達の逃げ道を塞ぎ部屋の隅に追い込む。 デカピノの上にピノが乗り蒼白な表情でピノが立ち竦むのを見てマチルダは、偽八雲の背中にクッションを投げた。 一瞬、偽八雲に隙が生まれた。 その隙をピノ達は見逃さなかった。 八雲が現れてから何度狙われたか分からない。 その間にピノ達も、逃げるスキルや反撃のスキルを上げていた。 ぴっ! デカピノの嘴が偽八雲の股間を引っ張る。 ぴぴっ! ピノが、その引っ張ったモノに蹴りを食らわす。 ボキッ。 偽八雲のモノが折れて床に落ちた。 普通の人間ならば、それは激痛だが偽八雲はチョコの身体。 痛みなど無い。 そのままピノを掴むとニヤリと笑った。
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