やっくんのバレンタイン

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八雲汁で壁にへばりつく八雲は鼻で笑うと言った。 「チビピノはあたちのでち。美味しく唐揚げにして食べるでち」 そう言うと天井裏に入ろうとした。 その時、偽八雲が復活した。 どしゃー。 口からチョコを吹き出し八雲を狙う。 「うわぁ」 そしてジャンプすると股間からチビピノを奪う。 ぴぃー。 チビピノの声が響く中、偽八雲はチビピノに頬ずりをした。 「ぬぬぬぬぬ、チビピノはあたちのでち」 八雲が偽八雲に飛び掛かる。 ぬるっ。 偽八雲が吐き出したチョコと八雲汁が混ざり益々悪臭で充満する腐腐腐館。 そして、八雲汁とチョコは魔法反応を始めていた。 しかし、その反応に誰も気付いていなかった。 チビピノを奪い合う、トゥルントゥルンなおっさん二人。 そのおっさん二人が奪い合うのを黙って見ているマチルダと流星では無かった。 「あの液体は危険でつ」 「服がボロボロに溶けるって事は、何かしらの呪術が作用していると考えて良いわね」 「この甘い香りと色から考えてチョコでつね」 悪臭へと変わる香りの中にわずかに香るチョコを嗅ぎ分けて流星が話す。 「そういえば、今朝はりおが台所が荒らされていたと言ってたわね」 「食器の注文をすると言ってたでつ」 「食材は減ってなかったの?」 マチルダは八雲同士から目を離さずに流星に訊ねる。 「チョコが大量に消えていたと…まさか、アレがでつか」 流星は茶色い偽八雲を見る。 「そう考えると、この色や香りも納得いくわね」 「でも普通に作ってこんな風になるでつか?八雲が魔力が強いとはいえ…」 流星はまだそれがチョコとは考えたくない一心でマチルダに問う。 「甘いわよ。誰も八雲が作ったとは言ってないでしょ。こんな突拍子も無いモノを作り出すのは…」 マチルダが苦々しく話す。 「…ちーちゃんでつか」 はぁ。 大きな溜息を吐くと二人して同時に頭を抱え込んだ。
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