第1章

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『あんたのこと、好きだなんて言った覚えないんだけど。変な勘違いしないでくれる?』 真冬。地面は隠れて、歩くたびに雪の音がざくざくと聞こえる。 チェックのマフラーとセーラーに身を包んでいたあの頃の好きだった相手。 『やめてよ、きもいんだけど』 初めて好きな相手に告げた言葉を、大きく変化球で打ち返されて。俺のたった1年の恋が幕を閉じた。 『そうだよな、ごめん』 自分の想いを通せなかった俺は、軽く謝って微かに笑った。 そして好きだった彼女は、俺の告白を簡単に無かったことにしてバスケ部のキャプテンとお付き合いを始めた。 そんなあまじょっぱい……いや、しょっぱすぎる学生時代。 この学生時代の思い出を噛み締め続けて、現在。 チビ。馬鹿。ブサイク。 これが28歳の俺で検索すると、当てはまるワードである。 小学校の頃、俺はクラス一喧嘩が強く、面白い人間だと皆から言われていた。 級友には好かれ、俺がいれば皆を笑顔に出来ると自分でも胸を張って、母親に話していた。 担任から渡された俺の通知表には必ず『クラスのムードメーカー』『優しい』『明るくて逞しい』と書かれていて、それを見ただけで誇らしい気持ちになれた。
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