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目の前に立っているのは間違いなくあの時俺をこっぴどい言葉で振った相手だ。まさか昔好きだった相手に、出くわすなんて思いもよらなかった。
丸い瞳を俺に向け、ピンク色の花柄ワンピースに身を包んでいた彼女は相変わらず可愛い。いや、今はどちらかといえば綺麗になった。
「あ、久し振り……」
特に言葉が思い浮かばず、ありきたりな言葉を出す。いや、何か言葉を吐けるならいい方だろう。こんな偶然会ったら、普通なら声は出ないものだ。
手を上げ、挨拶をすると、岸田は俺よりも後ろに居る隆が気になるみたいだった。
「その後ろですごいあたしのこと見ている人誰?」
俺の言葉をスルーし、隆に視線は一直線。
「あぁ、えーと」
隆の方を向くと、さっきまでの可愛い笑顔はなくて。とてつもなく無愛想な顔をしている。明らかに岸田を睨みつけているようにしか見えない。
俺は紹介をしようとすると、隆は自分から前に出てきた。
「飯田と言います。のんた……憲明と一番誰よりも近い間柄です」
危ねえ!口滑らして、変なこと言うかと思った!よかった……。
それにしても岸田の隆を品定めする目が気になる。自分に一切視線が来てないのに、嫌な汗が出てきた。
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