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あれから、どれだけの時間が経ったのだろうか、突然黒い布を被せられ、手をロープで結ばれ、車に乗せられた。
車に揺られているうちに、段々と冷静さを取り戻してきた、その間に気がついたことがある、たとえ布で顔を覆われていても、光は見える。
見える光は一つ、おそらく単独犯であろう、フードの男に感じた光より、かなり弱い。
光の大きさが危険度を表しているとしたら、まだ大丈夫、まだ……死なない、和也は自分に言い聞かせた。
「降りろ」
男の声が聞こえたあと、引っ張られるように車から降ろされた。
和也は、男に引っ張られながら歩く、建物の中に入ったのだろうか、二人の足音が響き渡る。
「この椅子に座れ」
男の指示通りにパイプ椅子に腰掛けたあと、男に布を脱がされた。
目の前にいたのは、髪は短髪で顎に髭を生やした、目つきの鋭い男だった。
男が、和也に顔近づけて言った
「これから聞く質問に、ハイかイイエで答えろ、いいな」
「エッ、ちょっと」
状況を理解できない和也が、男の話しを遮る、その瞬間、男に太ももを蹴られた。
「ガアァァァァ」
今までに感じたことのない激痛が和也を襲う。
「ハイかイイエで答えろっつったろ、なあ?」
「はい」
男は、たった一発の蹴りで、和也を支配した。
「私は30歳以上である」
「はい」
「私は童貞である」
「はい」
淡々と進んでいく質問の中で、和也はこの状況を切り抜ける方法を考えた。
おそらく、この男は僕と同じ、不思議な能力の持ち主、そしてこの男が確かめようとしていることは、荒井さんが調べた仮説と同じであること。
まさか、本当にあの仮説があっているのか?
全く信じていなかった和也は、心の中で麻里に謝罪した。
とはいえ、次の質問はおおかた予想がついた。“私は魔法使いである”この質問に「いいえ」と答える。男は、この場所をわからないようにした、少なくとも解放する気はあるのだろう。
うまくすれば無傷で帰れるかもしれない。
「じゃあ、次の質問だ」
男が和也の顔を見て、ニヤリと笑って質問した
「俺の名前は木村明、お前は?」
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