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「ほら、こんなのとかどう?」
そう言って母は春らしい花柄のワンピースを少女の体にあてる。
「いや、私は……」
少女は茶色に白い水玉柄のワンピースを指差す。
「…あれのほうがいい」
「もう…あなた、ああいう色や柄の服ばっかり持ってるじゃない、たまにはこういう華やかなのも着ないと」
似合うわよ、と母は満足げに微笑む。
「その柄は好きじゃないから…また今度、見に来よう?あの柄以外に気になった服ないし」
「…あなたがそう言うなら別に良いけど…」
そこで、母は思い出した様に切り出した。
「ところでいつか聞こうと思ってたんだけど、なんであの柄にこだわってるの?」
ふと少女の脳裏に
「僕、この柄凄く好きなんだ」
と微笑みながら少女の髪にリボンを結ぶ少年の姿が浮かんだ。
「……単に、私の趣味だよ」
少女は一つの三つ編みに結ばれた茶色の地に白い水玉模様のリボンを揺らしながら答えた。
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