第1章

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女は雨に濡れながら、 彼との思い出の場所に 長い間、佇んでいた。 そう一年前も、こんな小雨の 降る日だった。 公園沿いの細い路地に建っている 瀟洒な喫茶店。 その喫茶店を右斜めに見ながら 公園の噴水の横で雨に打たれていた。 紅い燃えるようなブラウスと 同系色のミニパンツは 肌にへばりついている。 女の服から雨の雫が、ぽたりと地面に吸い込まれる。 焦点の定まらない女の視線は 浮遊霊のように空中をさ迷っていた。
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